「思い出に・・・・・・なるのかな」

「なるよ。きっと。ただの楽しかった思い出に」


――思い出。

その言葉に涙が零れた。


それは、もう二度と会えない事を意味しているから。

廃れていく記憶を意味している。

もうこれ以上、増える事のない私達の思い出。

あの緑の世界で、私達の時間は止まってしまった。


萌の言葉がそうなら、どうして私達は出会ったんだろう。

こんな辛い思いをする為に出会ったの?

こんな涙を流す為に出会ったの?


だけど、思う。

もし、時間を戻せて彼の前にもう一度立つ事ができたなら。

私は間違いなく、今と同じ道を歩んでいただろう。

この悲しさや辛さを上回る程、それほど彼と過ごした日々はかけがえのないものだった。

私の人生が、変わるほど。