「どうしたらいいのっ!? もう、壊れちゃいそうなのっ」


ううん。

いっそのこと、壊れてしまえと思った。

悲しみも、辛さも、切なさも、何も感じなくなってしまえと思った。

掻きむしられる胸の痛みを感じなくなればいいのに。


だけど、この思いが私への罰の様な気がした。

壊れてしまいそうなこの感情を味わう事が、私への罰。

『不倫』という、許されない事をした私への――。


泣きじゃくる私をただ強く抱きしめる萌。

久しぶりに感じた人の温もりに、涙の量が増す。

ただ縋る様に萌の服を握りしめて、瞳を閉じた。


「会いたいよ。一ノ瀬さん」

「柚葉」

「こんな時でも思うの。会いたいって」


呟いた私を、より一層強く抱きしめた萌。

そして、涙絶え間なく涙を流す私の背中を摩り続けてくれた。