「もしかして・・・・・・」
私の言葉を聞いて、萌がまさかという様に息を飲む音が聞こえた。
大きな瞳が絶え間なく揺れる様子を見て、小さく頷く。
「もう、彼には会うなって・・・・・・そう言われた」
「会ったのっ!? もしかして、一ノ瀬さんの奥さんに!?」
「うん・・・・・・。萌と飲みに行った帰りにね。会ったの」
淡い街灯の下に立つ彼女の顔は今でも覚えている。
誰かに初めて向けられた憎悪が、忘れられない。
「バレたって事!? どうして!?」
「分からないの」
「一ノ瀬さんは!?」
「連絡取ってない」
ううん。取る事ができない。
今安易に連絡を取って、奥さんにでも知られたら事態はもっと悪くなる。
一ノ瀬さんからも、連絡はない。
きっと、取れない状態か。
それとも――。