「『覚悟はできてる』って言葉」


以前、確かにそう言った。

萌に、もしバレたらどうするのか聞かれた時。

あの時は、まだこの手の先に彼の手があったと思うと、懐かしい気持ちになった。


「覚えてるよ」

「――あの時は、覚悟できてるなんて言ったけどさ」

「うん・・・・・・」


何が起こっても、彼の手を離したくなかった。

どんな事が起こっても、誰に罵られようとも、彼の傍にいたかった。

隣にいられるなら、どんな不幸も受け入れられた。

そう、本気で思えた。

なのに――。


「やっぱり、私は弱いね」

「――」

「覚悟していたのに。もう・・・・・・心が壊れてしまいそう」


無理に持ち上げた頬がピクピクと痙攣する。

油断した瞬間、ポタリと瞳から涙が零れた。


「全部失ったみたい・・・・・・私」


何もかも失ってしまっても、1人で立てるほど私は強くないみたい。