「もっと見せて、柚葉のそういう顔」

「そういう顔って?」

「恥ずかしがってる顔、怒ってる顔、驚いてる顔――全部」

「ふふっ。欲張り」


彼の腕の檻の中に囚われる。

幸せな気持ちが波の様に押し寄せて、何故か泣きたくなった。

彼の真似をする様に、少しだけ冷たい彼の頬をそっと撫でる。

すると、ゆっくりと顔を近づけてきた彼が耳元でそっと囁いた。


「全部見たい」



ねぇ――。

私達は、どこへ向かっているのかな?


会ってはいけないと分かっているのに、会わずにはいられない。

触れ合ってはいけないと分かっているのに、欲しくて堪らない。

愛しちゃいけないと分かっているのに、もっと側にいたい。


彼のすべてが、見たい。

もっともっと、愛されたい。

愛して、ほしいの――。