「アハハッ。凄いね、それ」


一ノ瀬さんの最近あった事件を聞いて、ケラケラと笑う。

それでも、一瞬の間。

さっきまで合っていなかった視線が混じり合って、空気が変わる。


すると、ゆっくりと手に持っていたマグカップを置いた一ノ瀬さんが、そっと私を抱きしめた。

ふわりと香る彼の匂いを感じて、胸がきゅっと縮まる。


「やっと、会えた」


抱きしめる力を強めた彼が、耳元で小さく呟いた。

その言葉に同意する様に頷くと、いつもの様に大きな手が私の髪を撫でた。


「会えてよかった」

「うん、私も」


ゆっくりと私を腕の中から解放した彼が、優しく微笑んでそう言う。

まだ少し冷たい指先で、私の頬を一度撫でながら。


そして、指が顎先まで降りた時、クイっと顎を持ち上げられて、唇を塞がれた。