「あんなキスしておいて、そのまま帰れるわけないだろ」
熱い吐息と共に、耳元で囁かれた言葉。
その瞬間、ゾクゾクと甘い疼きが足元から駆けあがってきて、思わずギュッと目を閉じた。
彼はいつも、こうやって不意打ちで私を骨抜きにするんだ。
離れていた分、会えた時のドキドキが大きくなる。
もっともっと、欲しくなる。
「家・・・・・・」
「ん?」
「私の家、行く?」
ゆっくりと瞳を開けて、彼を見上げる。
少しだけ伸びた彼の髪が、冬の風に吹かれて揺れる。
――嬉しかったの。
本当は、すごく不安だったの。
もう、会えないんじゃないか、とか。
もう、私に飽きたんじゃないか、とか。
それぐらい、私達の関係は浅い。
いつ壊れても、おかしくない関係。
それこそ、視線の先にある水たまりに張っている、薄氷みたいに。