◇
「本当によかったの?」
一緒に会社のエントランスを出てしばらくした所で、隣にいた彼を見上げてそう言う。
すると、ふっと息の下で笑った彼がポンと私の頭に手を乗せた。
「ちょうど仕事が一段落した所だったんだ」
「それならいいんだけど・・・・・・」
頼まれていた資料を渡して帰ろうとした時、彼も一緒に帰ると言い出した。
内心嬉しさが込み上げたけど、もしかして無理しているんじゃないかと心配になった。
それでも、彼は大丈夫だと言い張ってここにいる。
「ねぇ、本当に無理してない?」
「心配症だな、柚葉は」
何度も確認する私を見て、彼は苦笑いを落とす。
それでも、いつもの誰もいない路地に入り込んだ瞬間、グイッと腕を引かれた。
あまりに突然の事で身構えきれなかった私は、されるがまま彼の胸に一度ダイブする。
そして――。