「本当によかったの?」


一緒に会社のエントランスを出てしばらくした所で、隣にいた彼を見上げてそう言う。

すると、ふっと息の下で笑った彼がポンと私の頭に手を乗せた。


「ちょうど仕事が一段落した所だったんだ」

「それならいいんだけど・・・・・・」


頼まれていた資料を渡して帰ろうとした時、彼も一緒に帰ると言い出した。

内心嬉しさが込み上げたけど、もしかして無理しているんじゃないかと心配になった。

それでも、彼は大丈夫だと言い張ってここにいる。


「ねぇ、本当に無理してない?」

「心配症だな、柚葉は」


何度も確認する私を見て、彼は苦笑いを落とす。

それでも、いつもの誰もいない路地に入り込んだ瞬間、グイッと腕を引かれた。

あまりに突然の事で身構えきれなかった私は、されるがまま彼の胸に一度ダイブする。

そして――。