視線を泳がせる私とは正反対に、至って普通の様子で私の前のソファに腰かけた彼。

皺ひとつないスーツを完璧に着こなした姿は、まさしくデキる男だ。

そんな彼とは対照的に、取引先にも関わらず気の抜けた態度を取っていた自分が恥ずかしくて、彼の顔が見れない。


そんな中、ソファに座ったまま一向に喋らない彼。

どこか不思議に思って、恐る恐る視線を上に持ち上げた。

すると。


「やっと、こっち見てくれた」

「――っ」

「久しぶり」


優しく瞳を細めて、笑みを作った彼。

真っ直ぐに私を見るその姿に、愛おしさが込み上げた。


「ひ・・・・・・さしぶり」

「ここ最近仕事が立て込んでて、なかなか連絡できなかったんだ。悪い」

「ううん、気にしないで」


どこか申し訳なさそうに、部屋に入ってきた時に小脇に抱えていた資料に目を向けて苦笑いを浮かべた彼。

その姿を見て、微笑みながら首を横に振る。

そういえば確かに、最後に会った時より顔に疲れが滲んでいた。