こんな所で働ける事すら凄いのに、それに加えて若きホープだなんて・・・・・・。

1人の人間として尊敬してしまう。

どう頑張ったって、彼のようにはなれないもん。


「そんな人と出会えた私も、ラッキーなんだろうなぁ」


小さくそう呟いた後、天井に向かって大きく背伸びをする。

誰もいない事をいい事に、大口を開けて欠伸までもしてだ。

でも、その時――。


「いいね。そーゆー気の抜けてる姿も」


聞こえたのは、久しぶりに聞く声。

慌てて後ろを振り向くと、入口の扉を開けたまま立っている一ノ瀬さんがいた。

口元に不敵な笑みをのせてだ。

後ろにいたのにどうして見えたの!? と思ったけど、目の前のピカピカに磨き上げられた大きな窓がうまい具合に鏡の様になっていて、自分の姿を映し出していた。


「悪いな。待たせて」

「い、いえっ」


女として、あらぬ姿を一番見られたくない人に見られて、もはや顔は真っ赤だったと思う。

しどろもどろになりながら、慌てて居住まいを正す。