「驚くかな。一ノ瀬さん」


すっかり夕日も落ちた東京の景色を横目に、小さく呟く。

胸に抱いている資料をギュッと抱きしめた瞬間、頬が無意識に緩んだ。

突然舞い込んだ出来事に、心が躍る。

こうでもしないと会えない事に少し悲しくなるけど、今は部長の『パシリ』に感謝しよう。


早く会いたい――。


逸る気持ちを押さえて、ようやく開いたエレベーターを駆け下りた。

少しでも早く、会いたいと思って。





「営業部の一ノ瀬さん、お願します」


綺麗な受付嬢に自分の名刺を渡して、彼を呼び出してもらう。

すると、内線で呼び終わった彼女が申し訳なさそうに眉を垂らした。


「申し訳ございませんが、ただ今一ノ瀬は打合せ中でして・・・・・・どういったご用件でしょうか?」

「届け物がありまして」

「もし、よろしかったら渡しておきましょうか?」


ニッコリと笑った彼女の言葉を聞いて、慌てて首を横に振る。

そんな事されたら、せっかくの機会なのに会えないじゃない!!