「驚くかな。一ノ瀬さん」
すっかり夕日も落ちた東京の景色を横目に、小さく呟く。
胸に抱いている資料をギュッと抱きしめた瞬間、頬が無意識に緩んだ。
突然舞い込んだ出来事に、心が躍る。
こうでもしないと会えない事に少し悲しくなるけど、今は部長の『パシリ』に感謝しよう。
早く会いたい――。
逸る気持ちを押さえて、ようやく開いたエレベーターを駆け下りた。
少しでも早く、会いたいと思って。
◇
「営業部の一ノ瀬さん、お願します」
綺麗な受付嬢に自分の名刺を渡して、彼を呼び出してもらう。
すると、内線で呼び終わった彼女が申し訳なさそうに眉を垂らした。
「申し訳ございませんが、ただ今一ノ瀬は打合せ中でして・・・・・・どういったご用件でしょうか?」
「届け物がありまして」
「もし、よろしかったら渡しておきましょうか?」
ニッコリと笑った彼女の言葉を聞いて、慌てて首を横に振る。
そんな事されたら、せっかくの機会なのに会えないじゃない!!