「一ノ瀬さんの事は、もっと教えて?」


だけど彼の事は、もっともっと知りたいと思ってしまう。

どんな事を考えて、どんな日々を過ごしているのか。

何をしている時が一番楽しくて、何が好きで、何が嫌いなのか。

一ノ瀬さんを象るもの、すべて知りたい。

これ以上好きになってはいけないと分かっているのに、止められない。

そう言った私を見て、一ノ瀬さんは優しく瞳を細めて私の頬を撫でた。


「じゃぁ、まず『一ノ瀬さん』っていうのは止めよ」

「――えっと、じゃぁ・・・・・・たかし?」

「何? 柚葉」


クスクスと笑い合って、キスをする。

小さなベットが軋む度に、抱きしめる腕に力がこもる。


どれだけ一線を引こうが、確実に私は溺れていっている。

あなたがいない日常なんて、もう考えられない程に。

怖いと思うと同時に、切なくなる。

好きになればなるほど、苦しくなる。

思い出が増える度に、悲しくなる。