「今は、確かカナダにいる」
「カナダ!?」
「日本にいる時の方が珍しいくらい」
「はぁ・・・・・・」
「もともと、仕事に生きる人だったからな」
想像以上のスケールのでかさに、思わずポカンと口を開ける。
バリバリのキャリアウーマンって言葉が本当にピッタリだと思う。
途端に、なんだか自分がとても小さく見えてしまった。
この東京という小さな世界で、右往左往している自分が。
やっぱり、自分は彼に不釣り合いなんじゃないかなって思う。
何の取り柄もない自分が、こんなパーフェクトな人の側にいる事。
きっと彼の奥さんくらいのレベルじゃないと、釣り合わないのだと思う。
もっと頑張らなきゃ。
もっともっと、魅力的な人になりたい――。
「はじめは、それでもいいと思ってたけどな」
そんな事を思っていた私に、まるで独り言の様に呟いた彼の言葉に視線を上げる。
「うまくいかないもんだな。人生って」
目が合った瞬間、どこか自嘲気に笑ったかと思ったら、腕を突然引かれて強く抱きしめられた。