長い沈黙が2人の間に流れる。

不思議そうな顔で私の顔を覗き込む一ノ瀬さんのビー玉の様な瞳。

揺らぎのないそれに見つめられて、心の奥底にあった想いが湧き上がる。


聞いてはいけない事だと分かっているのに、聞かずにはいられない事。

知りたいのに、知りたくない事。


――・・・・・・よせばいいのに、欲求のまま口を開いた。


「一ノ瀬さんの、奥さんは・・・・・・どんな人・・・・・・なの?」


小さく、今にも途切れてしまいそうな私の言葉を聞いて、彼の瞳が微かに見開かれた。

その表情を見て、微かに後悔する。

やっぱり、聞いてはいけなかったんだって思って。

それに、彼の口から直接聞かされたら、きっと私は嫉妬で狂ってしまう。


「ごめん・・・・・・今のナシで」


慌てて作り笑いを浮べて、彼から逃げる様に視線を外す。

それでも、突然頬に走った彼の優しい指が再び私の顔を持ち上げさせた。