「最近仕事はどう? 忙しい?」
「年が明けても、私の神隠し事件で持ちきり」
「神隠し事件って、・・・・・・あの?」
小さく口元を綻ばせた彼を睨みつけて、頷く。
きっと、彼の中でも珍事件なんだろう。
あの『神隠し事件』は。
「気になったんだけどさ、どうしてあんな場所にいたわけ?」
「え?」
「旅館から駆け出していく所を見たって人がいたけど、何かあった?」
「えっと・・・・・・」
問われて思わず口ごもる。
彼の奥さんの話を聞いた事と、女の人に囲まれる一ノ瀬さんを見ていたくなかった、なんて――。
そんな嫉妬に狂った自分を見せたくなかったし、知られたくなかった。