「綺麗・・・・・・」


リビングの窓にかかっていたカーテンを開けて、目の前に見えた夜景に溜息を漏らす。

もう見慣れた景色なのに、傍にいる人が違うだけで、こうも違って見えるのかと思った。

それでも、空に向かって伸びるビル群にともる灯りが一つ消える度に、何故か逃げ切れた様な感覚に陥った。


「東京に住んでると、こういった景色にありがたみがなくなるよな」

「でも、久しぶりに綺麗って思いましたよ」

「うん、まぁ、確かに綺麗かもな」

「でしょ?」


窓際に立つ私を後ろから抱きしめて、クスクスと彼が耳元で笑った。

胸の前に回された腕を両手で掴んで、彼の頭に自分の頭を寄せる。

小さく耳元に落とされたキスに、頬が緩む。


微かに香る彼の匂いに包まれて、胸が締め付けられた。

会いたくて会いたくて、焦がれた日々だったから。