「とりあえず、行こっ」


腑に落ちない彼の背中を押しやって、ショーウィンドウから離れる。

それでも、屋根の外に出た瞬間ポツリと頬に冷たいモノが当たって、思わず足を止めて空を見上げた。


「あ、雨だ」

「さっきまで晴れてたのにな」


同じ様に空を見上げた彼が、小さくそう呟く。

行きかう人々も、1人、また1人と傘をさしだした。

その時。


「ほら」


不意に隣から聞こえた、声。

視線を向けると、傘を私の方にかけてくれている彼がいた。

その些細な優しさに、胸が締め付けられる。

久しぶりに見る、その笑顔に泣きだしたくなる。


やっぱり好きだな、と思う。

会いたくて堪らなかったんだな、と思う。