「・・・・・・ハァ」


真っ白な息を両手に吹きかけて、擦り合わせる。

街灯の少ない場所に立って、行きかう人々を見つめた。


急いで仕事を終わらせて、崩れた化粧を直す。

横に流していただけの髪を綺麗に巻いて、真新しいコートに身を包んだ。


いつぶりだろう。

こんなに胸を躍らせながら、誰かを待つのは。

長年付き合っていた彼氏とはマンネリになり、会う事が楽しみで仕方ないといった感情はなくなっていた。


こんなに、お洒落をしたり。

少しでも綺麗に見せたいと思う感情は、久しぶりだった。


恋をするのが、こんなに楽しかったなんて。

ここ数年、ずっと忘れていた。