こうして何故か僕に構ってくる彼女、佐久間夜宵は今日も後ろの席から僕に常時話しかけてくる。
「やーよいのやーはー、焼肉のやー。やーよいのよーはー、えと…よいこーのよ!やーよーいのいーは…」
「いい加減にして欲しい、のい」
「ちがうよ!いねむりのいだよ!」
「どちらにしろ良くないだろ」
「ねぇ!君はさぁ、おしゃべり嫌いなのかい?」
「僕はどちらかというと嫌いかな」
「じゃあ私と真逆だなあ…」
「じゃあ話しかけてこないでよ」
「それは断る!じゃあ何が好き?」
「ゲームとか…?」
「そっかぁ、私もゲームは得意だと思うよ。」
「どうでもいいよ」
「ひどい!今度一緒にゲームしようよ!」
「君とは趣味が合わないだろうから嫌だなぁ」
「合うよきっと!」
「じゃあ…ポンタの大冒険」
「っ…」
彼女の顔が、急にとても驚いたような顔になった。
「知らないだろ?」
「……ポンタと一緒に世界を旅するゲーム…アメリカやイギリスとか…わたし…やったことあるよ…」
「え、あぁ、そうだったか…」
突然さっきまでの威勢を失ったように彼女はつぶやいていた。
「えへへ…ごめんね、ちょっと懐かしいなぁって…あれね、わたしゴールできなかったの」
「あれ、比較的簡単だったと思うけど…」
「多分、もう一生ゴール出来ないよ」
なぜか彼女は悲しそうに笑った。
たかがゲームごときに、ここまで熱なひともいるんだな、と思いながら、いつのまにか佐久間夜宵と普通に会話が弾んでしまっていた自分を、悔やんだ。