梁瀬は、オレと先生の関係を知った時、どうにもならない感情が込み上げたんだろう。

先生を睨み付け、


「ホントの話なの!?最っ低!!不潔!!」


言い放った。


もちろん先生は何も言い返さず受け止めた。

一人の人間である前に教師であるべきだったと、自分の心の未熟さを嘆いた。

そのせいで、大切なものを失ってしまったからと。

こんな事態になるなんて誰も思っていなかった。

オレは何も出来ないまま、好きな人一人も救えずアメリカへ逃げた。

事実上、オレは受けた傷も少ない。

誹謗中傷を一身に受けていたのは、残された先生だった。

あの細い体で、愚痴も文句も言わず、耐えていた。

学校で噂が立っていた時も、担任鈴木や教頭先生からの嫌がらせや嫌味をずっと浴びせられてたのに。


「だから女は!!女はすぐに男に媚びる!ここは学校なのにあんたはキャバ嬢か!」


「若い男の体はさぞかしよかったでしょうよ!?

何も知りませんってな顔して、裏では何してるか分からんもんですな!

私も相手してもらえますか?」


「体で男子生徒を虜にして、相手したのは一条だけじゃないんのでは?

綺麗だからって甘く見てましたかな!」


パワハラ、セクハラで訴える事も出来たろうに。

そんな状況にいた先生もオレは救えなかった。