その夜、


「一条君大丈夫?」


先生からsnsが届いた。


「うん、大丈夫」


「二人が喧嘩したって聞いたからびっくりした」


「喧嘩じゃない。ホントに大丈夫だから」


「それならいいんだけど」


「先生、逢いたい」


そう送ったオレは先生の返事も待たず、部屋を飛び出して夜の町を駆け抜けた。

気付けば先生のマンションの前に立っていた。

インターホンを押せば先生の声が聞ける、先生に逢える。

でも、何度も押そうとしたけど押せない。

逢いたい人はその扉の向こうにいるのに。

誰かに気兼ねをして?後ろめたさから?


先生!何でか分からないんだけど、心が苦しい!

胸が、胸がとても痛い。


文字ではなく、逢って先生にそう伝えたかっただけなのに。

自分は容易く好きな人と痛みを共有できる、けど、北嶋も梁瀬も、胸の痛みは誰とも共有できず苦しんでる。

そう思ったら余計苦しくて泣けた。