「二人ともどうしたの?その顔!」と梁瀬。


「別に何でもねぇよ?」北嶋が笑って梁瀬に返した。


「……」オレは黙ったまま片付けを続けた。


「大丈夫って顔じゃないじゃん!」自分が関わっている事を察した梁瀬。


「だからホントに何でもないって!」北嶋が真剣な顔で言った。


北嶋の顔を一瞬見た梁瀬は、北嶋を振り払うようにしてオレに、


「徹君!何かあったんでしょ?」


「……」


北嶋の視線が痛かった。


「黙ってないで何とか言いなよ!」


「……」


「徹君!!」


「はぁ~。お前を取り合って喧嘩しました!!

そう言えば満足なのか?違うだろ?ホントに何でもないから」


オレは梁瀬の問い詰めを終わらせた。

クラスの連中は聞いてない振りをしながら、しっかり聞いてるような態度。

視線はこっちを向いていなくても、脳がしっかり会話を意識してる顔をしてた。

そのまま教室を出ると、後から梁瀬が追いかけて来た。


「何かごめん……」かなり落ち込んだ顔して梁瀬が言った。


「何でお前が謝るんだよ?ホントに何でもないから」


「うん。私、北嶋君から告白されたの」


「そっか」


「うん。でも断った」


「そか」


「うん」


お互いそれ以上の言葉は出なかった。


梁瀬が困っていたら、どんなことがあっても守ろうと思ってた。

ホントに妹のように思っていたから。それだけ近い距離でオレたちは育ったから。

けど今回だけは、祐希、お前を救えない。

気持ちに応えてやれない。


ごめんな。梁瀬。オレは役立たずだ。