北嶋と梁瀬の二人は——————
泣いている梁瀬の横で、北嶋もまた、
「幼い頃から一条だけを見て来て、やっと気持ちを伝えられのに……
アイツは梁瀬じゃなく、他の誰かを見てた。梁瀬の気持ちを思うと胸が痛いな」
胸の中で、慰めの言葉もなく、遠くを見つめる北嶋。
「北嶋君、私大丈夫だから、ホントに。ありがとう。ごめんね」と梁瀬。
「うん、そか。じゃ先に教室帰ってるわ」
北嶋はそのまま背中を向けて戻って行った。
その途中で、
「三年間だぞ!俺はお前だけを見てたんだ。
お前は他の男を見てたの分かってたけど、俺はそんなお前の表情も見てたよ。
ずっとずっとどんな時もお前だけを見てたよ。
いつか俺の視線に気付いてくれるって。
俺じゃお前を笑わせる事は出来ないの?どうして一条なんだよ……
くそっ!何か泣けて来た」
心の中で呟きながら、北嶋の目頭は熱くなっていた。