「ホントにオレ先生とキスしたんだ!」まだ信じられなくて、しばらくは興奮状態だった!

何度もそのシーンを思い出す。


その日から、モノトーンの景色からカラフルに色付いた景色へ世界観が変わったようだった。

ある物語の、ロボットが心を探しに旅に出るように、オレは温かいものを手に入れたようだ。

先生と学校は一緒に帰ることはなかったけど、登校は、偶然を装って頻繁に一緒に通った。


そんな日々の中で、


「一条君はどんな色が好き?」


「色?いきなりだな?そうだな~暖色系が好きかな?赤とかオレンジとか、ビビッド系とか好き!」


「あぁ!!何か分かる~!一条君それ系が似合うわ~なるほど~」


「なるほど~って何納得してんの」


「何でもない」


先生もまた楽しそうだった。

他愛もない会話もとても愛しく思えた。

色付き始めた紅葉も、いつもなら感動は薄いのに、先生といると自分の胸の中が映し出されたほどに心震えた。

先生の足音、確かに隣で聞こえる。

オレは生きてると実感する。

きっと今オレは幸せだ。