唇が離れた後すぐ、こぼれるような息で


「約束して?今やってることは無駄じゃないから」


憂いのある表情、それでいて愛しむかのような眼差しで先生はそう言った。


呆然としていたオレ。我に返ってから先生の言葉を頭に巡らせた。


「約束する」


オレは壁に先生を押し付けて、もう一度唇を奪った、さっきより少し長く。

先生は抵抗しない。

離した先生の唇を見て、オレは気持ちが高揚してた。


「先生のこと下の名前で呼びたい」


「それはダメよ?名前で呼び合うことに慣れてたら、いつ何処でその癖が出ちゃうか分からないでしょ?

例え学校の外で逢っても、名前で呼び合う事だけは禁止!」


先生はオレの口元を見つめながらそう囁いた。


「分かったよ……」


先生は本当に徹してた。

だから、オレも先生の事は「先生」、先生はオレの事絶対に「一条君」と呼んだ。