すると、


「あ!徹君!面談終わったの?」と梁瀬が、下りてくるオレを見上げて声を掛けて来た。


「あん……」そのまま行こうとすると、


「徹君!ちょっと待って!」梁瀬がオレの前に立ちはだかった。


「あのさ?ちょっと話があるの」オレの顔色を伺う梁瀬。


大きくオレは息を吐いて「何だよ?」と返した。心はもう家に着いてる。


何やら言い出しにくそうにしている。


しばらく待ってると、


「私!徹君の事が好き!!付き合って欲しいの!」


思い詰めた顔で言って来た。


一瞬オレはびっくりして言葉を失ったけど、


「ごめん……。今そんな余裕ないんだ」


「早川先生の事?」オレの顔を見てすぐ返して来た。


俯いたオレ。


「だって相手は先生じゃん!無理だよ!

それに徹君、私の事お嫁さんにするって言ってくれたじゃん!

その約束に、私が星が欲しいって言ったら徹君長い棒持って取ってくれようとしたし、

今度山へ行ったときに取って来てやるよ!って……でもそれはヒトデに変わっちゃったけど」


今までにない梁瀬の真剣で切ない表情。



「あ、あれは幼稚園の頃の事だろ?」苦笑いしてオレは言った。



家族ぐるみで梁瀬とは付き合ってたし、小さな頃はよく色んな所に出かけた。

一緒に海に行った時に、星に似た形のヒトデを見て、

「海にも星があった!」ってオレは嬉しくなって梁瀬にいっぱい取って渡した。

そんな事もあったな。懐かしい……



「例え無理でも、今は誰のことも考えられない」

下を向いたままオレはそうと答えた。