強く抱きしめ、キスを堪能していると、

「ん~、苦しい一条君……」

そう言うと、先生はオレから唇を外した。

「オレはまだ足りないよ!」

もう一度キスをしようとしたら、

「ここでなくてもいいじゃない?」

「片時も離したく!二度と!」

「一条君」

「変わらず綺麗だ。愛してるよ、瞳」

早川先生の頬を両手で包み、オレは言った。

「もう三〇だよ」

「でもまだ二九だ。間に合ったもんオレ。オレは年齢で好きになったわけじゃない!

先生の持ってる品だとか、知性、人柄そのものに惹かれたんだ」

「私そんないい女じゃない!」

「自分を卑下すんなよ!オレが言ってんだから間違いない!

それにオレはそんな女に惚れた覚えはないし、

もし自信がないなら、自信があった時の先生にオレが戻してやる!

挫けずに引きこもらずいてくれて、ありがとう。

外であえて接客の仕事をしてる先生を誇りに思う!

強く咲く花、オレの月下美人」

「一条くん」

「これでもオレ結構すごいんだぜ!セレブなんだから。

先生を泣かせた世間に、五年分の仕返しをしてやる!

オレの気高く清らかに咲く大切な花に付けた色や泥を、塗りたくった罪を思い知らせてやる!」