会場の通路、階段を走り抜け駆け抜け、そのまま一気に外へ出た。

すでに外は真っ暗。外と中の気温差は耳と指先で感じた。

オレと早川先生の温度差もこんなにあったのかな……?

ちらつく雪と向かってくる北風が、頬や身に染みる。

早川先生は一人で世間の言葉も、降りしきる雪も痛いほど身体に浴びていたのか?

こんなに時間を費やさないと気が付かないなんて!

無我夢中で走り続けた。

等間隔に並ぶ電信柱を一体何本通り過ぎただろう。

大通り沿いのカフェに差し掛かった時、仲睦まじい!?早川先生と南先生らしき二人が出て来たのが見えた。


「こんな時間に!?」オレの中に疑念が過る……

以前なら、早川先生が誰といようと走り寄って声をかけたろう、けど今足がすくんで動けない。

遠くから何も出来ず二人を見つめるしか出来ない。

動揺も不安な顔も、格好悪いほどの嫉妬も、情けないほどの弱気な足元も、車道を走る対向車のヘッドライトが、スポットライトのようにオレを照らす。

顔を背ける。今振り向かれたらオレだってバレる!!

車が途切れた瞬間、乱れた呼吸まで二人に聞こえそうで、「何で!?」自分の気配を消そうとする?


「逃げたから?」「後ろめたさ?」「違う!オレは早川先生を捨ててない!!」


追い掛けられず葛藤する。遠ざかって行く早川先生……


「行かないで!……行くな!!」


心で叫ぶオレ。

二人の背中を見送り、オレも背を向けた。

吐く息の白さが切なかった。