「ふん!嫌味か?私はあれから仕事を転々として今は見ての通りだ。

ざまあみろと思っているだろ?ま、身から出た錆だから仕方ないがな。

で?なぜ手袋を?それは、便器を磨いた手袋なんかで洗面台なんか洗ってみろ!余計菌を広げてしまうだろ。

だから一度洗って除菌して取り掛かるんだ」


「なるほど~流石ですね?その神経の細やかさ。

誰もそこまで思って、掃除する人なんていないと思いますよ。

先生のような考えをお持ちの方が病院におられたら、院内感染の原因の一つも取り除けるだろうに。

やっぱ鈴木先生は、改めて凄いと思いましたよ。

あなたはこれで終わるような人じゃない。陰ながら応援しています。ありがとうございました。

それでは失礼します」


一礼して行こうとすると、


「一条!お前私を憎んでないのか!?」あの鋭い目つきがオレを見据える。


「憎む?なぜ?むしろ感謝していますよ!

少なくとも人を思いやれるようになりました。あんな風にならないと気付けなかったことですし。

あのままでいたらオレは腐ったままでしたよ」


オレが返事をした後、鈴木が照れくさそうに俯いて笑ったのを確認して、オレはその場を出た。

世間は広いようで狭いと言うがホントだなと思った。

でも鈴木先生が元気だと分かっただけでもよかった。