梁瀬はオレの思いを知らない……


「先生がどんな思いでいたか、逃げた徹君には分かる訳ないよね。

当時高校生の、親の脛かじった徹君には分かる訳ない!!

それまでだったなんて、そんな事よくも言えたもんね!

あの時、徹君が大人だったら、男だったら!先生をあそこまで追い詰める事なんてなかったはず!!

未熟なくせに性欲ばっかり一丁前で!求めるばっかりで、徹君は先生に何を与えられたの!?

少なくとも迷惑じゃない!結果苦しめて泣かせた。そして逃げた!

大人の男になったって思うんなら、正々堂々と会いに行きなさいよ!その目でしっかり現実を見て来なさいよ!

どんな結果が待っていようと受け止めるべきよ!

縁を大切に、なんて言ってる人が、縁あった人を簡単に断ち切ろうなんてダメだと思う。

私の好きだった徹君はそんな人じゃない!

私が留学先をアメリカに選んだのは、徹君がいたからなんだから。

格好悪くったっていいじゃない。見せてよ!本当の一条徹を。

あの時、青春真っ只中、私が好きだった事、後悔させないでよね」


梁瀬は涙ぐんでオレに訴えた。

そんな梁瀬を見ていると、あの頃の熱い思いが蘇った気がした。

オレは梁瀬に向かってうなずいた。

すると梁瀬も理解を示してくれたのか、笑ってうなずき返してくれた。