別の場面では、昼下がりのカフェで、先生と南先生は会っていた。

冗談言いながら笑う先生の姿を見て、


「早川先生、僕と結婚して下さい……

あれから五年が経ちましたよ。まだ一条の事を忘れられませんか?

僕ならあなたの事をこんな辛い思いや、寂しい思いなんてさせないのに!

少しでいい、僕を見てほしい」


窓から雪のちらつくのが見えた。

南先生の言葉の後、急に先生の顔色が曇った。


「……。いつまでも南先生の優しさに、甘えてる訳にはいかない。

けど、今まで本当に支えてくださって感謝しきれないほどだ」


俯いた先生は、心の整理が出来ないまま気持ちで答え、姿勢を変えない。


「あ……、困らせるつもりもないです。

ただ、あなたを見てると僕もどうもしてあげられなくて辛くなる」


言い終わると、初めて先生の前で哀しい顔を見せた南先生。


「こんなにも思って下さるのに、どうして私は応えられないんだろう。

私もまた、南先生をどうにもしてあげられないのが辛い……ごめんなさい」


南先生の顔を見つめて答えた、そして早川先生の目から涙がこぼれ落ちた。


「一条!早く戻って来い!やっぱりお前しかこの人を笑顔に出来ないんだ!」


早川先生の涙を見つめながら、南先生は、何も出来ない自分に、歯がゆさを抱きながら心で叫んだ。