仕事面では、高校の時には、発想と斬新さを買われて評価を受けていたが、大学に入ってからは、当然の事だけれど、発想の転換と進化を望まれた。
自由に描いていた絵も、企業側の意向に耳を傾け、またニーズに合わせたものに変えて行き、オレ本来の独自性が失われて行った。
友人からも「最近描く絵に個性が無くなったね」と言われるようになった。
そう!その通り!そんなんだったら、オレじゃなくてもいいんじゃねぇか!?なんて思っていたから。
名前だけが一人歩きしている。
オレが描くことに何の意味もない。
酷く言うなら、他の誰かの描いた絵に、オレのサインさえあれば成立するような。
それに才能あるヤツなんて、どんどんと湧いて出て来る。
流行が廃れるように、オレもまた飽きられていく。
そしてオレは、自分がどんな絵を描いていたかすら分からなくなっていた。
もがけばもがくほど深みにはまって行き、描けば描くほど迷いが生じる。
順調だったはずなのに、こんな時に壁にぶち当たるなんて、すぐにでも先生を迎えに行けると思っていたのに。
今まで真剣に何事にも取り組んでこなかったから、スランプってやつの切り抜け方を知らない。
誰もそうなんだろうか!?
ピンチはチャンスとよく言うけれど、ホントなんだろうか?
これから先、生きていく中で、あと何回こんなものに遭遇するんだろう。
こんな時ほど思い出す……
「先生に逢いたい……淋しくないわけがない。
先生の声が聞きたい。先生に触れたい。
先生?今あなた何をしてますか?先生……」
泣けて来た。