アメリカに来た最初の一、二年は、先生が恋しくて恋しくてどうしようもなかった。

忘れようとしても無理だった。

北嶋のSNSがさらにそ思いを強くさせる。不安を煽らせた。



「南先生に奪われてしまう!」



そんな思いばかりだったが、リックの件やオリヴィアとの出会いで、自分の中で心境の変化を感じた。

笑って手放した先生の目は泣いていた。その気持ちが痛いほど伝わって来る。

離れて気付く自分の身勝手さ。

離れると、先生の体を心配する自分がいた。

先生は、今日は笑顔でいられただろうか?

今日を無事で終えられただろうか。

先生はオレの事を思い出してくれてるだろうか。

先生は今でもオレの事、好き?だろうか。

早くても三年、遅くても五年と、自分の中で区切りを決めて、そのプレッシャーに押し潰されそうになったり。

先生に連絡を取ろうと思えばすぐに出来た。

けど、あえてしなかったのは、きっと前に進めないと思ったから。

そして先生も望まないと思ったから。

オレが言葉を送ったところで、先生は返事をくれないだろう。

でも、スマホを握りしめ、何度も何度も指が躊躇ったよ。

色んな思いを繰り返しながら、確実に前に進む自分がいた。