地面にひれ伏したリックにもう一発お見舞いしてやろうと、殴りかかろうとしたら、リックは目を伏せやがった。

目を伏せたって事は、事実上リックは負けを認めた。

それにこれだけのギャラリーの中で、リックの負けを証明したのだから、そんな奴の息の根を止める必要なんてないと思った。

オレはリックを起き上がらせて、アイツの厚い胸元に軽くグーで叩き挨拶して、その場から離れてオレは教室に戻った。

オレの後を追うようにフラフラとリックが戻って来た。


「この借りは必ず返す。今まで悪かった、ゴメン」


素直にリックは謝った。根まで腐ってないんだ。

もしあの時、去っていくオレの背中に、リックが襲い掛かっていたら、オレは一生をリックを卑怯者呼ばわりしただろう。


「誰もが自慢できるわが校のカッコいいスター選手でいてくれよな?」


オレが言った後、何かが芽生えたように二人で笑った。

何か胸の辺りがくすぐったくなるような、前にも述べたが、まるでアメリカの青春映画のような光景だ。

この一件からオレに対するイジメはなくなった。

オレは本来すべきことを思い出した。リックに感謝したいくらいだ。

上手く言葉が話せなくても、ジェスチャーで思いを伝えることも必要と学んだ。

熱い思いがあるなら、必ず伝えなきゃいけない!今この時が大事なんだと。