「あの時……早川先生が一条君とつき合ってるって分かった時、私先生に酷いこと言ったから。

今ならあの時の先生の気持ち分かるような気がする。人を本気で好きになったらどうするか。

先生が何も言わず何で身を引いたか、先生の今の気持ちも、今の私なら分かるような気がする。

ホントにごめんなさい」


「そんな事、もう忘れて覚えてない。

私の方こそあなたを始め、クラスのみんなを裏切って深く傷つけた。ごめんなさい」


泣きながら首を横に振る梁瀬。


「あ!そうだ!梁瀬さん?ご飯まだ?まだなら一緒にカレー食べない?」


買い物袋に詰められた食材を持ち上げて梁瀬に見せた。

早川先生のマンションで二人で作ったカレーを食べた。

食べ終わって一息ついた後、梁瀬が静かに平林との事を話し始めた。


「ホントに何も知らなかったの……

気付いたらどんどん彼に惹かれて行って、その人との未来を描くようになってた。

彼が大丈夫って言えばホントにそんな気がして、何でもできるんじゃないかって。

彼が側にいてくれたら、世界でも成功するかもって本気で思ったり。

好きだよって優しく言いながら、そんな裏側で、ホントは奥さんがいて家族がいたなんて……

そんなこと急に言われても、すぐには気持ち切り替えられない。

……!?でも発覚以来、彼とは会ってない!ホントよ?」


すがるような目で梁瀬は言った。