その後沈黙を破り、梁瀬が記者会見を開くことになった。


梁瀬「この度は、皆様に多大なるご心配とご迷惑をお掛けした事に、深くお詫び申し上げます」


記者「相手方の奥さんにお詫びの言葉はないのですか?悪いとは思わないんですか!?」


梁瀬「……そう言われて今初めて罪悪感が生まれました。知らなかったとは言え、私は相手の方の家族を裏切ったのは事実です。

私自身が、裏切られた思いが大きくて、ご家族の気持ちを察する余裕もありませんでした。

私は奥様を、お子さんを傷付けたんですもんね。本当に申し訳ございませんでした」


そう言うと深々と頭を下げた。表情は感情も見られなかった。


記者「何か他人事ですね?」


梁瀬「ごめんなさい。ホントに今はそれしか言えないです。ごめんなさい」


それでなくても細身の体が、以前よりも増して、げっそりとやせ細って見えた。

言葉は少なくても、思い詰めている様子はそれだけで分かる。

悲痛な面持ちの梁瀬に、記者はそれ以上踏み込めず、返って同情を誘った。

高校卒業と共に、十代でこの世界に入り、本格的に世界進出を始動した矢先、思わぬ壁にぶち当たり、うまく行かず苦しんでいる最中、男性の免疫もない、何も知らない二十歳そこそこになった彼女の前に、遊び人、業界でも女性関係にだらしないと有名な平林に出会ったのが運の尽きと、同情にも思われるような内容、また面白おかしく掻き立てた。

梁瀬と事務所サイドは、しばらく活動を停止する意向を発表した。