目の前が真っ白になり呆然としていると、SNSの着信音が鳴った。


「記事見た?騙してた訳じゃないんだ。ちゃんと言おうと思ってた!会って話そ?」


彼からだった。

裏切りを文字で証明された。


「事実なんだ……会ってどんな言い訳を聞けと言うの?」


返信出来ないまま、代わりに心が答えた。

脱力感と共に、手からスマホがすり抜け落ちて行った。

彼を深く信じ切っていた、奥さんがいるなんて疑いもせず。

心の隙間に、彼はパズルのピースのようにぴったりとはまっていた。

慎重に見たら微妙に隙間があると、そのピースが間違ってはめ込まれている事に、いつもの自分なら気付けたのに。

弱っていた自分に、優しく手を差し伸べてくれた彼の存在はとても大きく、梁瀬の胸にはまった。

海外進出の野望より、彼といたいという気持ちの方が膨れ上がって、舞い上がっていた。

そんな簡単に彼を忘れられるはずもない、でも一緒にはいられない。

心の整理がつかず、何をどうすればいいのかすら分からない。

連日その事でマスコミにも叩かれる。



「自分より十も年上なら、結婚しててもおかしくないのに……そんな事考えもしなかった」


溜め息と同時に苦笑した。

哀しさより喪失感の方が大きかった。

涙なんて出て来もしない。