仕事から終わって、先生が従業員通用口から出て来たところを、南先生は声をかけた。


「早川先生!お疲れさまです」


「あ!お久しぶりです!南先生。お元気でしたか?それと私もう先生じゃないですから」


「あ!そうでね。でも何か早川先生の方がしっくり来ますし。それになんて呼べばいいか……

僕は元気ですよ?早川先生は大丈夫ですか?」


「はい!何とか」

笑って何でもないように振舞った先生。


「お休みいつですか?気晴らしにもしよかったらご飯食べにでも、もしくは映画見に行きませんか?」


「そうですね?それもいいかもしれませんね?」


いつもなら断られていたのに、また断られる前提で言ってみたのに、違った答えが来たことに驚いた。


「ほ!本当ですか!?いや~やったー!!いつにします?」


飛び上がる南先生。

互いの都合をつけて二人はデートする事になった。

もちろん、元同僚して。そして久しぶりの再会に。


デート当日、小洒落たレストランで食事をする二人。


「今の仕事大変そうですね?接客って本当に一番しんどいかもしれないですね」


「どんな仕事も楽なことは無いってことですね」


「早川先生、愚痴くらいは言ってくださいよ?吐かないと精神おかしくなるから」


「はい!ありがとうございます。こうやって気晴らしに誘ってもらえて、久しぶりに淀んだ空気が抜けた気がします」


「それはよかった。ところで、早川先生、一条と連絡は取り合ってるんですか?」


首を振る先生。


「そうなんですね。そうですよね……」何を聞いてんだ僕はと俯く南先生。


「きっと向こうで頑張ってると思います。彼はあのまま終わる人じゃない」


「ええ。でも……恨んだり、後悔はないですか?」


「恨む!?私が?とんでもない!後悔も一切ないです。ただ、大切な人達に迷惑を掛けた事が唯一の後悔。

今は一条君の幸せを願うばかり。そして私も頑張って生きないと!」


「早川先生……」


そして映画も堪能し、まだ陽があるうちに二人は別れた。

先生と南先生は、気晴らしと言う名目で何度も同じ時間を共有した。

この時の先生にとって、南先生はホントに支えだったんだろうな。