親の苦労を目の当たりにし、正義感の強かった青年(担任鈴木)は必死で働き、親を助けながら何とか大学にも行った。

大学の入学金もほぼ自分で貯めた。

大学に通いながらアルバイトも続け、掛け持ちまでして、自分の事と家の借金返済のために働いた。

そんな苦労もよそに、青年の両親は、どうしたら店が振るうかより、借金返済の事しか見えなくなり、ただただお金をすぐ貸してくれるところを探すようになり、金利の高い消費者金融にまで手を出し、事実上、自転車操業となって行った。

息子からお金を借りることは、返済が遅れても遅延損害金も発生しないため、グレーゾーンな金利もなく、なんなら、永遠に返さなくてもいいという発想さえ生まれた。

「迷惑かけないから!必ず返すから!」が口癖になり、青年からお金を奪って行った。

大学に通うための、年額授業料に青年は泣いた。

親を助けながら大学を通うには、限界があった。

好きな化学を学び、学者になることを望んでいた青年の夢は志半ばで潰えた。

親を助けるため、大学を辞めた。

その親からのむしり取りは何十年にも及んだ。

その間に青年の心は蝕まれていった。

夢も希望も失くし、笑うことも無くなった。

「お金さえあったら……」いつからかそんな思いが頭に過るようになった。