木の種類によって何を作るか適している物が変わったり、使いたい木目を吟味している時間も楽しかった。


結婚してからいつの間にか遠ざかってしまっていたけれど、今、またあの頃の感覚が蘇ってきていた。


自分の手をぼんやりと見つめていると、地面に蟻の行列ができていることに気が付いた。


働き蟻たちは一瞬も休まず働いている。


「こんな小さな蟻だって働いてるのになぁ」


思わずそう呟いた。


蟻たちがどこへ向かっているのが視線で追いかけて行くと、ベンチの後方に植えられている木に群がっているのがわかった。