あたし達のひとつ前に並んでいる同い年くらいの女子高生二人組も、柚子や瑠菜と同じように見本を見ながら目を輝かせて話しているんだもん。
というか彼女達が着ているこの制服って、隣町にある有名なお嬢様学校のやつじゃ・・・?

「ねぇねぇはづき!はづきはストラップどれが欲しい?」
そう訊ねた彼女に、はづきと呼ばれていた少女が「んー、うちはもちろん女装verかな。桃(モモ)は当然もどき狙いでしょ?」と着けているイヤホンの位置を直しながらいたずらっぽく笑う。
「うんうん。・・・って違うよっ!もう、私の推しキャラ知ってるくせに」
拗ねたような口調に反して、その表情は笑顔。

――お笑いコンビか。

違和感の無いノリツッコミに、そんな感想を抱く。
無意識にその呟きが声に出ていたのだろう。

二人は顔を見合わせると、照れたような微笑を浮かべた。


・・・・・・仲、良いんだな。
あたしも瑠菜達とはそれなりに仲良しだと思うし、今日もこうして一緒にパフェを食べに来たけれど、この二人みたいな狭く深くの関係も憧れる。

・・・今度あたしもノリツッコミ、瑠菜達に向けてやってみようかな?

「ねぇー、文は何か狙ってるやつある?」
不意にそう訊きながらのしかかってくる柚子に「うーん、どれでもいいかな。あたしは箱推しだし」と答えて押し返す。
「そっかー」と言うと、柚子はあたしの背中から離れていった。

ふう・・・。いくら柚子が細身とはいえ重いものは重い。
ただでさえあたし力無いのに。


そんな事をしているうちに、あたし達はいつの間にか列の真ん中近くまで移動していた。
ふと時間が気になってスマホの時計を見ると午後四時半。

この調子じゃあお店に入れるのは五時を過ぎた頃かもね。