「校内図見れば良いんじゃないの?その方が早いし、正確だと思うんだけれど」
あたしの言葉に、周りの表情が固まった。
そして・・・
「そっか、その手があったか!」
と言いながら、両手を合わせる柚子。
「さすが文。そんなこと、今まで誰も考えてなかったよ」
そう口にしたのは、瑠菜。彼女はいつも皆の事を褒めている気がする。
「それで・・・、この中に校内図持っている人、居る?」
誰かがそう言った途端、場の雰囲気が一気に暗くなった。
入学した時と、あとは進級時に配られたけれど、そんなの持ち歩いてないし・・・あ。
「そうだ、確か来客用のが生徒玄関にあったよ!あの大きなパネル!」
柚子のその言葉に、いち早く駆け出したのは新谷 未筝(シンタニ ミコト)。
陸上部に所属しているからなのかとても足が速くて、見えなくなったと思ったら遠くの方から「こら新谷、廊下を走るんじゃない!」と男性教師の大きな声が聞こえてきた。
「・・・あれ?」
何気無く教室に残ったメンバーで雑談していると、急に柚子が首をかしげた。
「どうかした?」と訊ねると「あ、えーっと・・・・・・ううん、やっぱ何でもない」と何かを言いかけて首を横に振る。
柚子が言葉を詰まらせるなんて珍しいなんて思ったけれど、それ以上は何も言わなかった。
それからしばらくして、未箏がポニーテールを揺らしながら帰ってきた。
「あったよ、生物学室!西校舎の2階、一番北に」
そう彼女が伝えた途端、皆の表情が歓喜と落胆の二種類に別れる。
歓喜の方は、生物学室が見つかったから。
では、落胆の理由はというと――
「西校舎の一番北って、ここと間逆じゃん・・・」
グループの一人がそう呟く。