屋上の階段に着いて、手のひらを広げると、血が滲んでいた。



そういえば、血を見るのは久しぶりだ。



血が出るような刺激のあることから遠ざかっていたせいだろうか、生まれる前から流れていた生きている証を忘れていた。



血の滲んだ手のひらをじっと見つめる。綺麗だ。舐めてみる。鉄の味が広がる。珍味。ズキズキと手のひらが疼く。傷が波打っている。赤い波。赤い海。夕日に染まった赤い赤い海。



……こんなことを考えている場合じゃない。



本来の目的から脱線してしまっていた。これも奇病のせいだろうか。