入るときは誰もいなかったトイレに、女子が2人、話しながら入ってきた。
会話の内容は、「次の授業なんだっけ?」、「確か古典じゃなかった?」、「あー、安岡の? プリントやんなきゃ。」といったもの。
その会話だけで、私はこの二人が私と同じクラスの女子だということがわかった。私のクラスの3時間目は安岡先生の古典だ。
トイレの鍵が閉まる音が2回聞こえ、ああ、二人とも隣の個室に入ったんだということがわかった。
続いて、スカートのこすれる音、水を流す音、カランカランカランとトイレットペーパーを回す音が聞こえ、また水を流す音、鍵がガチャッと開く音がそれぞれ2回聞こえた。
「にしてもさっきはビビったよね。」
「豊島のこと?」
「なんかさー、あの子怖くない?」
「怖い? キモイじゃなくて?」
「キモイという名の怖いってこと。だって、衝動的に教室飛び出すとか。」
「確かに、何するかわかんないよね。」
「人とか殺しそうじゃない? 『誰でもよかった。』とか言って。」
「思った!」