Side 伊大
「伊大~!」
くそでかい兄貴の声がする。
スマホを伏せて、前を向く。
「うっせぇな。そんな大声出さなくてもいいだろ…。」
俺は今、すこぶる機嫌が悪かった。
やっと、あの子を見つけた。
やっと、名前がわかった。
なのに結愛は、俺を覚えていなかった。
「おまえ、結愛ちゃんになにしたんだよ。」
兄貴もなかなか不機嫌だ。
何したって、キスしたけど。
そんなの言わないけど。
「あ?何にもしてねーけど。覚えてたのかよ。」
俺たち兄弟が、幼い頃に通ってた親戚の家。
その近所に住んでたあの子。
「それならいいけど、覚えてたってなんのことだ?」
どうやら、俺と兄貴は話が噛み合ってないようだ。
「俺たちが小さいとき、妙おばさんにの家の近くに住んでた子だよ。
よく遊んでただろ。」
その後、兄貴から衝撃的な事実を知らされたのは、言うまでもない。