「実はちょっと緊張しちゃって」

「えっ、珍しいね。いつも超ストレートなのに」

「今日は絶対に失敗したくないから……」


いつだって本気で向き合ってきたけど、今日だけは特別なんだもん。


林田さんとの約束もあるし、守ってくれたお礼だってまだ言えてない。

今日こそは!って考えてたら、考えすぎてあっという間に放課後になっていた。


そろそろ覚悟を決めないと本当に今日が終わってしまう。

もしもまだ校内に残っているなら…………やっぱり中庭にいるのかな……。


「じゃあさ、俺で練習してみる?」

「へ?」


突然岸本くんが意味のわからないことを言ってきた。

あまりにも唐突すぎて目が点になる。


「緊張して渡せないなら、一旦俺を挟んでおけば本番も大丈夫なんじゃないかなーって思ってさ」