バレンタイン当日。

凛くんが登校するや否や、ファンの子たちが壮絶な争いを繰り広げていた。


「相崎くん!私のチョコ受け取って!」

「ちょっと私が先だってば!!」


チョコを抱えた女の子たちが凛くんを取り囲み、廊下がごった返している。


うわ、すご………。

出遅れたのは言うまでもない。


朝イチで渡そう!って意気込んでたけど、みんな考えることは一緒みたい。


「静香は行かなくていいの?」


前の席に座っていた皐月が心配そうに聞いてきた。


「う、うん……」


もちろん私だって行きたいけど、ファンの子たちに目をつけられてる手前、迂闊に行動できなかった。


守ってくれたとはいえ、本人の前で厄介事を増やしたくない。