私は麗園寺結柚(れいえんじゆず)。
蒼の学園に通う高1。
麗桜(れいおう)の姫でもある。
姫って言ってもただ守られてるだけのか弱い女じゃない。
麗桜の幹部は総長の晴輝、副総長の白鳥信(しらとりしん)、森下光(もりしたひかる)、福本聡太(ふくもとそうた)、田村恵輔(たむらけいすけ)。
ちなみにだけど、恵輔だけが私が麗桜の姫になることを反対していた。
皆ケンカはかなり強い。
何て言ったって全国で1、2を争う族だから。
そんな幹部たちと対等なレベルで戦えるほど私はケンカができる。
中学の頃、私は荒れに荒れ、夜中に出歩いてはそこらの族にケンカを吹っ掛けてボコボコにしたりしていた。
ついた通り名は〝黒風(くろかぜ)〟。
そして、そんな麗桜と敵対している族がいる。
それは、麗桜と全国1、2を争う蒼竜(そうりゅう)。
総長は花崎叶多。
私が通ってる蒼の学園に叶多も通ってる。
てか、蒼の学園が蒼竜が主に仕方なく通ってる高校だ。
なぜ麗桜の私が蒼の学園に通ってるのか。
まぁ、麗桜が通ってる桜ヶ丘高校より偏差値が高いってのが理由かな。
まぁ桜ヶ丘も蒼の学園も偏差値ひくほど低いけどね。
誤解のないように言っておくけど、私は偏差値75くらいある。
ただ勉強したくなくて蒼の学園に入学した。
もう1つある理由は、晴輝に勧められたから。
どうして桜ヶ丘じゃなくて蒼の学園を勧めてきたのか。
それは分からないけど、晴輝のことだから何か考えがあるんだと思う。
入学して2ヶ月くらい経つけど、何も話してくれないんだよね。
晴輝が考えてることとか。
そのおかげで叶多とちゃっかり仲良くなっちゃったし。
叶多は蒼竜の総長だから仲良くしちゃダメなのに。
席が隣で、なぜか気に入られてしまった。
私が麗桜の姫だってことは隠してるから、毎度うまくかわすのに必死だ。
もちろん、私が黒風だってことも隠してる。
知ってるのは晴輝だけ。
信たちにも秘密にしてる。
申し訳ないんだけどね。
何となく言いにくいし。
黒風って、ここらじゃかなり名が知れていて、〝危険なヤツ〟だって思われてるから。
同じ暴走族の世界の人間からも。
別に気絶させるレベルでやってただけなんだけどな…。
本当に危険なヤツは人殺すし、暴力団と繋がってたりして拳銃持ってるし。
麗桜はそんなことしないけどね。
暴走族の世界に善悪があるとすれば、善に入るだろう族だから。
私が今いるこの麗桜の倉庫は、3階建てでものすごく広い。
1階が、普通の家でいうリビングのようなもので、ソファなどが端にあって、他は広場的な感じになってる。
2階は、総長、副総長、姫の部屋。
吹き抜けになってるから、それぞれの部屋のドアが一階からでも見上げれば見える。
そして3階はそれぞれ幹部の部屋と、大部屋が2部屋。
大部屋が2部屋もあるのには理由がある。
麗桜が行き場をなくした人を拾って居場所を与えてくれてるから。
私も与えてもらった者の一人だ。
居場所をなくした者の一人…。
「結柚!ちょっといいか」
部屋でくつろいでると、ドアの外から晴輝の声がした。
かしこまってる声で、何となく雰囲気が堅い気がした。
「何?」
ドアを開けて晴輝と目を合わせる。
「下で話がある」
…なんだろ。
普段おちゃらけてる晴輝の真剣な表情は、私を不安にさせた。
何か問題でも起きてるんだろうか。
それとも…別れようって言われる……?
姫を辞めてほしいって言われる…?
嫌な胸騒ぎがする。
〝聞きたくない〟と言えば済むはずのことなのに、素直に1階に降りるのは、やっぱり晴輝を信頼してるからなんだと思う。
晴輝は私を必ず守ってくれるし、かと言って過保護みたいに心配するわけでもない。
ちょうどいい関係を保ってくれるんだ。
デートだって片手で数えれるくらいしか行ってない。
キスなんて1度もない。
それでも私は晴輝を信頼してるし大好きな人だ。
だから〝別れよう〟なんか言われても却下するだけ。
ごめんね?晴輝。
こんなに気が強い女が彼女で。
なぁんて。
「まぁ、座れよ」
1階にあるソファには、幹部が勢揃いしていて、威圧感ハンパない。
厳ついし、怖いし、髪の毛カラフルで眩しいし。
かく言う私もかなり明るめな茶髪だけどね。
「で、話って?」
なんの躊躇いもなく晴輝の隣に座る。
ふかふかのソファが、沈んだ。
まるで、重い空気に耐えきれないかのように。