「茉乃、それ飲んだらそろそろ再開するぞ」
利世のその声に返事をして、わたしは真悠くんの方に向き直る。
「真悠くん!わたしそろそろ利世にまた教えてもらうから、またね!」
思いがけず偶然真悠くんに会えたというのに、もうお別れなんて名残惜しいけど、頑張ると誓った手前、しかも皆よりも下手となるとより一層頑張らなくてはいけない!
そう自分に言い聞かせ、真悠くんにお別れを言った。
「飴、ありがと!練習終わったら食べるね!ってかこれ瑞季くんにも後であげていい?」
「もう先輩のなんで、好きにしてください」
「そっか!ありがとう!」
「じゃあ、頑張ってくださいね」
そう言って利世にもじゃあと一言挨拶して、真悠くんは離れていく。
「真悠く〜ん!ありがと〜!気をつけてね〜!」
無視されちゃうかなーと思いつつも、真悠くんの後ろ姿に向かってぶんぶんと手を振った。
そうすると真悠くんはくるっと振り返って、一瞬ふわりと笑ってまた歩き出した。
…え?
冷静に実況してる場合ではない。え、今笑ったよね!?
「ええええ!イケメン過剰摂取っ!」
バシッ
「いて!」
「ばーか」
叩いたのはもちろん利世である。
「ひどいなーもー」
わたしが利世に抗議しかけたけれど、
「ほら、続きやるぞ」
と言ってスタスタと踊りやすいスペースへと移動してしまったので、わたしの抗議は途中で打ち切り、また練習を再開した。
「よーし!頑張るぞー!」
成り行きで応援団になってしまったけれど、またそれも、真悠くんのおかげで頑張る理由ができました。