「この辺でいいだろ」
振り付けのしやすそうな広い場所で立ち止まった利世。
生徒達が出てくる昇降口もからも見える場所だが、応援団以外もう残っていないであろうこの校舎で、そんなことは関係ない。
「ごめんね、利世。わたしのせいで」
気を遣わない男友達とは言え、さすがに申し訳ない。
「ほんと感謝しろよ?」
そう言って自慢げに笑う利世。
謝罪なんてするんじゃなかった、とその顔を見て思った。
「で?どこがわかんねぇの?」
利世の一言で早速練習に入り、わたしはわからない所を聞きまくった。
「なんか、このときの姿勢が…」
「あー、それはこう!なんつーの、こっちの足を出して…」
面倒くさがりのはずなのになんなんだ。この男、意外と真剣に教えてくれている。
と思ったのもつかの間。
「なぁ、1回休憩しね?」
前言撤回。やっぱり利世は利世だった。
とは言え、振り付けも利世のおかげでみんなに追いついてきて一段落ついたとこだったし、わたしも疲れていたから休憩をすることにした。
「俺飲み物買ってくるわ。茉乃何がいい?」
「え、いいよ。付き合わせてるのわたしなんだから買ってくるよ」
教えてもらっている上に飲み物まで頼むなんてどこのわがまま娘だ。さすがにそれは申し訳なさすぎる。